1. NDIRの動作原理

概要

測定の対象となるガスが、特定の波長域の赤外線を吸収し、その吸収の度合いがガス濃度に応じているという原理を利用したものです。 NDIRとは、Non-Dispersive InfraRed(非分散型赤外線吸収法)の略です。
光源から放出された赤外線は、測定対象のガスを通過したのち赤外線センサにて計測されます。 ガスにより赤外線が吸収されると、赤外線センサが受光する赤外線の光量に変化が生じます。
赤外線センサは、測定に不要な波長の赤外線を取り除く光学フィルタが備えられており、特定の波長域の赤外線のみを測定することによって対象となるガス以外の干渉を最小限に抑えます。
また、サンプル(対象波長)とリファレンス(非対象波長)の両方の波長を測定しています。 リファレンスの変化とこれらの光量差を知ることで、光源やセンサの経年変化や、汚れによる光量の変化をキャンセルし、定期的なキャリブレーションをすることなく、長期に安定した測定を実現しています。

CO2分子の場合、波長4.26μmの赤外線を選択的に吸収する性質を持っています。 CO2分子が増えれば、より強く吸収します。 すなわち、CO2が高濃度の場合、入射光の減衰は大きく、低濃度では減衰は小さくなります。
赤外線エネルギーの吸収量に対する変化の関係は、CO2のガス濃度と測定セルの長さによって決まります。 これをランベルト・ベールの法則といい、センサ出力と濃度は指数関数的な関係となります。
日セラのNDIR方式CO2センサは、赤外線光源、サンプル・セル、光学フィルタ、そして赤外線センサで構成されています。 光学フィルタは光源より発せられた赤外線のうち、CO2に吸収される帯域のサンプル波長とCO2および他の雑ガス成分の影響を受けないリファレンス波長の2系統の構造となっています。 赤外線吸収量そのものを吸収比率で測定するため、光源の経年変化などの影響を補償しながら、安定した測定を連続して実現します。

ランベルト・ベールの法則

ある媒質の濃度と、この媒質によって光が吸収される割合との間に一定の関係(ランベルト・ベールの法則)があります。 すなわち、光が均一な媒質を透過するとき、透過光の強度の減少量は光の強度と媒質の厚さ(光路長)に比例します(ランベルトの法則)。 また、この媒質が溶液の場合、媒質の厚さが等しければ、吸収される光の量は溶液の濃度に比例します(ベールの法則)。 これらは次式で表されます。

A = log (I0/I) = ε・c・l

A: Absorbance 吸光度
I0: 入射光の強さ
I: 透過光の強さ
ε: 吸光係数
c: 溶液の濃度
l: 媒質の厚さ

溶液の濃度cをM(mol/Liter)、光路長 l をcmで表すとき、εを分子吸光係数(Molar absorption coefficient)といい、単位はM-1cm-1となります。
また、I/I0(%)を透過率(T: Transmittance)といいます。

測定方式

2波長式サーモパイル型赤外線センサ(日セラ製の方式)
測定用およびリファレンス用の2波長を検出する方式を採用しています。 これらにより、経年変化などによる特性の変化を補償します。 長い間、キャリブレーションすることなく精度の高い測定が可能です。

 

単波長式サーモパイル型赤外線センサ(他社の方式)
測定用の1波長しかありません。 定期的にキャリブレーションが必要です。 それを補完するために相対的に低い濃度の環境を一定の濃度と捉えて、ソフトウエアで補正する方法が取られています。

2. 用途

空質アプリケーション
石油ファンヒーター/ストーブ
エアコン
インテリジェント・ビル …など

一定のCO2濃度に達したら、換気を促す警報信号を出力します。

自動車アプリケーション
車内CO2濃度のモニター …など

CO2が一定の濃度を超えた場合、外気導入を行うものです。

農業アプリケーション
ビニールハウス
植物工場 …など

ビニールハウス内の環境モニターや、保管庫等のCO2濃度を検出し、最適な環境に保つための制御に使用されます。